今回借りたのは、日本で1番売れているホンダのN-BOXです。
いわゆる軽ハイトワゴンですが、それにしてもこれでもか!というくらいノッポです。
この背の高さゆえの違和感とかあるのかな?と思い走り始めましたが、それは全くの杞憂でした。
ドラポジは同じホンダの旧フィットにも似た、シートというよりリビングのチェアのようなかけ心地ですが、それはそれでステアリングやペダルの位置も適切ですし、ハンドルを切っても、ブレーキを踏んでも「多分こうなるだろう」という直感に背くことなく曲がり、止まります。
加速については、エコモードでは「遅!」と思いますが、オフにすればアクセルを踏んだだけ、過不足なく騒音もそこそこ静かに加速します。
当たり前のことと思いがちですが、そうではない車に当たることもままあるので、これは実は凄いことです。
ボディもしっかりしていてミシリとも言いませんし、ドアの開閉音も「パン」なんて安い音はしません。
強いて言えばタイヤの小ささゆえか段差を越える時のショックが大きいくらいで、それ以外走りについては違和感も不満もありません。
Aピラーの位置も適切で視界も良好、エアコンもダイヤル式で使いやすいですし、なんとオートエアコンを奢っているのもすごい。
シフトセレクターとハザードのスイッチも、ぱっと手が届く所にあるのですが、お互いの距離が近すぎ、ハザードをつける時にレバーを押してしまいNレンジになってしまうこともあったのはちょっと惜しいポイントです。
あと、微速では前輪がどっちに向いているかモニターに表示されます。
「いかにも初心者向けだな」と思ったのですが、想像以上に便利です。むしろこんな大事なことをドライバーの経験と想像力にまかせていた今までのクルマがおかしい、とすら思えてきました。
後部座席もとても広く、3ナンバー車でも後席のニースペースや頭上空間が足りないのが当たり前だった昔が嘘よのう。
こうなると荷室は狭いのでは?思いますがさにあらず。ホンダならではのセンタータンクレイアウトのおかげかフロアがとても低く、縦方向に容量を作り出すという素晴らしい設計になってます。
もちろん積み下ろしも楽になるわけで、さすがはMM思想(古い)のホンダです。
と言うわけで、違和感なくすんなり乗れて、使い勝手が良いクルマですが、そのかわりなんの快感も感動もありません。デザインもオラオラと飾り立てるわけでなく、ミニマルが鼻につくほどシンプルでもなく、絶妙に普通(皮肉ではなく、これを意図的にやるのは本当に難しい)で、所有する満足感からも遠いです。
このクルマは、操る楽しさや所有欲といったクルマ的価値観から最も遠い「走る買い物かご」です。これが日本で1番売れているクルマだ、という事実はある意味日本の自動車文化が成熟の極みに到達した証拠といえるでしょう。
「そんなの夢も希望もない」と言われるかもしれませんが、これに乗るためには、高い教習料を払って免許を取り、普通車よりは安いとはいえ幾許かの税負担をし、二重課税のガソリン税を払う必要があるばかりか、無税なわりにルールを守らない自転車に気を使うという社会的責任も負わなきゃいけません。地域によっては、こう言うクルマは生活をするために欠かせないインフラであるにもかかわらず、です。このような社会こそ夢も希望もないのではないでしょうか。
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