久しぶりのカーシェアレポートです。今回借りたのは、一度乗ってみたかったニッサンの新型ノート e-powerです。残念ながらプロパイロットはついてませんでしたが、高速道路から峠道、土砂降りの雨までいろんな状況で楽しむことができました。
「e-power」とはいわゆるシリーズハイブリッドで、エンジンで発電した電気を電池に貯めてモーターで走行する方式です。エンジンは発電だけ、走行はモーターだけなので複雑な動力分割機構やトランスミッションが不要でシンプル、というメリットがあります。ノートは新型からこのe-powerのみで、純ガソリン車は設定がありません。
走り出してまず感じたのはやはり非常に静かということですね。モーター走行であることはもちろん、ロードノイズや風切り音も小さく、雨がルーフを叩く音もよく遮音されています。どうしてもロードノイズが高い時はそれに紛れてエンジンを回して充電しておくので、エンジン音を感じるのは登り坂の加速のような高負荷時のみ。音量もヤリスやアクアより抑えられていて、この静かさの中でモーターならではの滑らかな加速を味わえるのは、クラスを超えたというよりクルマを超えた新しい運転体験でした。
その一方で、「止まる」「曲がる」については今までのクルマらしい感覚が楽しめます。
電動系は電気自動車のリーフからのキャリーオーバーですが、回生ブレーキの感触は改善されていて、ペダルの踏み込み加減と減速の出方は欧州車の摩擦ブレーキのようにナチュラルです。
回生の強さを切り替えるeペダルのスイッチは廃止され、走行モードとセットで切り替わるようになりました。ECOモードがeペダルON、NORMALモードがOFF、SPORTSモードがその中間のようで、私的には高速道路ではNORMAL、峠ではSPORTSがちょうどよかったです。
ステアリングは中立付近の不感域が少なめで、サスペンションも動き始めから程よい締まりを感じるタイプなので、峠ではソリッドな走りが楽しめます。
ターンインでアクセルオフして回生ブレーキを効かせ、荷重移動にあわせてステアリングを切り始めるとインサイドに吸い寄せられるように曲がってくれますし、保舵中もタイヤのグリップが程よく手のひらに伝わってきます。また、細かいS字の切り返しでもリアがモッサりせずキビキビと追従してきて爽快です。
ヤリスが懐の深さで受け止めつつ踏ん張るのと比較すると、ノートはよりビビッドに運転操作に反応してくれます。両車とも運転が楽しいクルマですが、スポーティさへのアプローチが違っていて興味深いです。
先代ノートではクルマの動きがドライバーの直感に反することが多かったので、この「思うがまま」さは大きな進化ですね。
進化は走りだけでなく、内装にも表れています。バルキーで安っぽかった先代から質感が大きく向上しており、ライバルと肩を並べました。
センターコンソールは高さのあるタイプでスポーティな包まれ感があります。狭く感じるのでコンパクトカーでは珍しいですが、コーナリング時に左の膝で体を支えやすく、早くから横Gを感じるこのクルマにはあってますね。また、プロパイロットの手放し運転時のアームレストも兼ねていると思われます。セレクターの下は空間があり、狭さ感を緩和ししつつ小物置き場にもなっているのも気が利いてます。
シートはもう少しフィット感が欲しい気もしますが、長時間でも疲れませんし、ドラポジもピタッと決まります。また、ヤリスにはないシートベルトアンカーの上下調整があり、鎖骨に当たってムズムズしない位置でベルトを締めることができます。
前方視界も良好で、Aピラーが目に入りやすい位置にもかかわらず、視野がとてもクリアに感じました。フロントガラスが平面に近いことが好影響してるのかも知れません。
メーターはフルデジタルならではの仕掛けがあり、ワイパーやライト、ドライブモードのスイッチを操作すると、その結果がディスプレイにポップアップされるようになっています。
小さなインジケーターをメーターの中で探したり、ステアリングの向こうのスイッチを覗き込むような煩わしさを解消する良いアイデアですね。
コンパクトカーの内装は、カジュアル感や開放感の向こうにコストダウンが透けて見えがちだったりしますが、様々な工夫で運転に集中できるようにデザインされており、このクルマの大きな魅力になっています。
その点で惜しいのはエアコンで、操作パネルはダイヤル式で使いやすいものの、ミニマムでも風量があるのに吹き出し口を閉じることができず「涼しいけど顔に風を当たらない」ような微調整ができないのが残念でした。
走りでも、ドライバーが見て触れる所でも、電動車らしい新しい感覚と、従来のクルマらしい運転する楽しさを両立しているのがとてもユニークです。
ヤリスはクルマらしさの延長線上でクラスの常識を塗り替えましたが、ノートはそれとは違った方向で常識を塗り替えていて、電動時代の新しい価値観を示したクルマだと思います。純ガソリン車を廃してe-powerだけに絞ったことに、ニッサンの強いメッセージが込められているのではないでしょうか。
そう思うと、やはりプロパイロット付きこそがこのクルマの本来の姿だと思われます。機会があればぜひ運転してみたいです。
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