少し時間がたちましたが、ゴールデンウィーク中にGRでないヤリスで長距離と峠道をたくさん走ることができたのでレポしたいと思います。
ヤリスのショートインプレとGRヤリスは以前紹介してるので、一読いただけると幸いです。
結論から言えば、期待どおりの仕上がりであるばかりでなく、価値観が問い直されるような凄いクルマでした。
パワーはエンジン91馬力にモーター80馬力、これで車重は1.3トンほどなので遅いはずがありません。アクセルの踏み加減に対して遅すぎず速すぎずナチュラルに加速してくれます。
ハンドリングはステアリング操作に遅れることなくノーズが入ってくるのは先代ヴィッツやGRヤリス譲り。気持ちいいだけでなく、安心感も高いです。リアの追従はややモサっとしてますが、気になるのはS字カーブを素早く切り返した時くらい。スポーツカーじゃないのでこれでぜんぜん及第点でしょう。
高速ではやや腰の高さを感じますが総じて快適で、適度な保舵力でラクチンにまっすぐ走ります。
どんなシーンでも、ドライバーの操作に対し直感に背くことなく、イメージ通りに動いてくれるクルマです。
このクルマ、私が90年代半ばまでに乗ったどんなクルマよりシンプルなメカニズムで、クラスが下にもかかわらず、明らかに思い通りによく曲がり、よく止まり、速くて快適です。リアサスなんてトーションビームですから、独立懸架ですらありません。この30年の間、シャシーやサスペンションに飛躍的な技術革新があったわけでもないのに、この進歩は凄いと思います。
一方で、電子的な運転支援機構には飛躍的な革新がありました。このクルマには、アダプティブクルーズコントロールや、レーントレースアシストが装備されており、実は今回初めて使ってみました。
クルーズコントロールについては、下手なドライバーを助手席から見守るようにヤキモキしてかえって疲れてしまうのでは?という先入観があったのですが、そんなことはありませんでした。
「クルマの流れを少し上回る速度に設定する」というコツは必要ですが、ギクシャクすることもイライラすることもなく、スムーズに前のクルマについていってくれます。原理的にはそんなに先の流れまで読んでないはずなのに大したものです。
レーントレースアシストは、生真面目にセンターをキープしようとします。隣車線に大型車がいると無意識に反対側に寄ってしまったりしますが、その程度でも修正を入れてきて、その感触はワダチにハンドルを取られたような感じで、気持ち良くはないのですが、誰でも知ってる感触に似せてあるのはなるほどー、と思いました。
こうした運転支援機能を使って高速道路を走るのは、運転しているというより、大型船の船長になって操舵手に指示を出してるみたいな感じで不思議な安心感があります。
帰り道はがっつり渋滞にはまり、車を手放して以来1年ぶりの5時間超えの連続運転でしたが、あまり疲れを感じませんでした。とくにシートは秀逸で、練馬インターを降りてから「そういえばお尻が痛いな」と感じた程度。シート形状だけでなく、生地の選択が適切でドラポジが崩れないんですね。
ちなみにGRヤリスとはシートの厚みが違い、やや着座位置が高く、前方視界も良いです。
荷室は先代ヴィッツとほぼ変わらず、リアシートを倒せば170センチくらいのスキー板が斜めに積めます。
このクルマは、「走る曲がる止まる」という性能と、運転の楽しさや使い勝手、快適さといった価値が絶妙なバランスで、かつそれぞれが高いレベルにあります。ただ車体が小さいだけで、その出来栄えば車格=クラスを超えたものがあると思います。ベーシックカーは我慢を強いられるもので、クラスがあがるほど満足度が高くなる、という常識を覆しつつ、いわゆる「小さな高級車」とも違います。我々が漠然と抱いている「クルマというものの価値観や尺度」について、一度立ち止まって考え直すことを提案されている気さえしてきました。これはほんとうに凄いクルマです。
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