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痛車ではありません。痛板です。
事のきっかけは今年の春、かぐらでアニメキャラをあしらったスノボを見かけたことでした。ぱっと見は既製品に見えましたが、そんなニッチなボードが売られているとは思えず、また私は以前からプリンターを使ってオリジナルステッカーを作っていたりしたので、
「これは自作に違いない」
と思い、ネットで調べてみると相当数の人が「痛板」と称して、家庭用プリンターとラベル用紙を使ったオリジナルデザインのスキーやスノボを作っていることがわかりました。

足下をみれば4シーズンを過ぎたReismのLAFはすでに1度の化粧直しを経てだいぶくたびれた様子。
Reismステッカー
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考えてみればこれほど「痛板」に適した板はありません。なにせ「ラベルやステッカーを貼る事を前提にした」板なのですから。

絞っても板を買い替えるお金は出てきませんが、板のデザインのアイデアは出てきます。すでに沢山の痛板を作ってらっしゃるEUROPAさんなど先人たちのブログを参考にしながら、作製に取りかかりました。


■まずは素材選び

素材は先だって「GENGA展」が好評だった大友克洋氏の「AKIRA」を選びました。一つ一つのコマを抜き出しても、絵としての完成度が高いですし、マンガマンガしたねちっこさのない洗練されたドライなタッチがなんとなくオシャレな感じもします。もちろん、デザイナーとして大きな影響を受けた大好きな作品でもありますし、単行本全巻もっているので画像が簡単に手に入る、というのも理由の一つです。
というわけで、単行本をひっくり返して、絵柄をチェックします。ついつい内容を読んでしまって時間を忘れるので注意!
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「AKIRA」を選んだときから、どの絵を使うかは頭に浮かんでいたので、「どの絵を使うか」ではなく「使いたい絵は何ページにあるか」を確認する作業になりました。好きなマンガはたくさんありますが、印象に残っている絵が次々に浮かぶなんてのは他にありません。絵を選んだらスキャナーで読み込んで、コントラストや明るさをフォトショで調整します。


■板の外形を計測する。

板に沿った形でラベル用紙を切らなければならないので、板の外形を計測します。トレーシングペーパーでなぞったり、板をスキャナーで読み取る方法もありますが、職業柄寸法で抑えないと気持ち悪いので計測する事にしました。曲率のキツいとことは細かく測る事が大事です。
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このデータを基に、イラレで板の外形を描きます。


■デザインを考える

デザインで大切なのは「制約」です。今回の最大の制約は、使用するプリンタが最大でA4サイズまでしか使えないことです。つまり、板全体を覆うためには必ず「継ぎ目」が発生することになります。それを前提に考えたのがトップの画像です。
絵はA4サイズに収まるように拡大し、「AKIRA」らしくダイナミックに配置しました。絵と絵の間に隙間を空けることで、マンガの「コマ割り」をイメージさせつつ、継ぎ目をごまかしています。また、万一ラベル用紙が剥がれても貼り替えが簡単です。基本はモノトーンで、「AKIRA」のロゴと「あのカプセル」だけをカラーにしてアクセントにしています。絵柄は板の外形との間に5ミリ程度余白が出来るよう小さめにしておくのがコツです(理由は後述)。


■ラベル用紙にプリントアウトする

今回使ったラベル用紙は次の2種類です。発色を揃えるなら1種類にすべきなのですが、売り切れだったのでやむを得ず。
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174センチの板左右1ペアで、A4用紙8枚に収まりました。
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■切り抜き

プリントアウトしたラベル用紙を外形にそって切り抜きます。絵柄は板の大きさよりも5ミリ余白が出るようにしてあるので、板の外形より5ミリほど小さい大きさで切り抜く事になります。
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よく切れるカッターナイフを使うのがコツです。


■板のクリーニングとビンディング取り外し

板に貼ってあったロゴやステッカーを全てはがし、ビンディングを取り外します。スキーのビンディングを留めているのはセルフタップネジなので、ネジを外すのはあまり良くないですが、まあ、1度くらい平気でしょう。
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ネジ穴の周りは盛り上がっていて、ラベルを貼るときにシワ等の原因になるのでカッターナイフで削り取っておきます。板の縁のササクレも切り取っておき、縁が大きく削れているようであれば、エポキシ系接着剤を盛りつけ、硬化後にカッターナイフで整形しておきます。


■ラベルを仮置してみる

切り抜いたラベル用紙はいきなり板に貼付けず、借り置きして様子をみます。
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サイズのズレなどあれば、ここで微調整します。大丈夫そうならセロテープで仮止めします。
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■ラベルを貼付ける
仮止めしたセロテープはそのままでラベルの裏紙をはがし、板にラベルを貼付けます。指でなく、定規等でシゴくように貼付けるとシワや気泡が出来にくいです。
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■保護シートを貼る

この状態で滑ってしまうと、ラベル用紙を切り抜いた断面から水が浸入して絵がにじんだり、またエッジで傷ついたり、剥がれたりする恐れがあるので、上から保護シートでカバーします。ラベル用紙をスキーの外形よりも5ミリほど小さくカットしておくのは、この保護シートの貼付け代を稼ぐためです。スキー板は細長いのではみ出さないように貼るのは結構難しいですが、貼り直しができるので大丈夫です。


余った部分は板の外形に沿って切り落としますが、この時に、カッターナイフを斜めにあてると、外形より僅かに内側で切り落とせるので、滑走時にエッジが引っかかって保護シートが剥がれてしまうのを予防できます。前述の板の縁のササクレをとっておいたり、削れた部分を整形しておくのは、この作業がラクにかつキレイに出来るからです。

ビンディングをとりつけて完成。
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さらに万全を期すなら、保護シートの周囲をエポキシ系接着剤で固めると良いと思っていますが、補修時にはがすのが大変になるので、そこまでやるかは考え中です。

以上、けっこう手間はかかりますが、難しいわけではありませんし、愛用の板がお気に入りのデザインになるばかりでなく、ピカピカの新品のようになるので満足度は高いです。(ATOMICのD2のような凹凸のある板は無理ですが…)

それにしても凄いのは大友克洋氏の画力です。マンガの原稿は縮小して印刷される事を前提として描くので、今回のように拡大してしまうと、粗が目立って当然なのですが、彼の絵はそういうことが全くありません。また、マンガの絵は、極論すればストーリー説明のための記号でしかないはずなのに、一枚の絵として抜き出しても鑑賞に値するというのは本当に凄いです。

※痛板の作成については、2016年度版の最新情報があります。ココをクリック!

※「AKIRA」は大友克洋氏の著作物ですので、私がこの板全体や一部、あるいはプリント用データを販売したり配布する事は絶対にありません。また製作の代行等もやりませんので、欲しい!と思った方は自分でトライしてください。また、その結果何が起きても私は感知しませんので、自己責任でお願いします。
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