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以前、ResimのLAFを痛板にしたエントリーを書きました。これがけっこうな人気記事なのですが。
実は昨年購入したATOMIC REDSTER FIS SL、ご存知のとおりサンドイッチ構造なので痛板にはうってつけ。ニューモデルであることを隠せば盗難予防にもなるだろう、と痛板化しました。
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こんなグラーデーション+非対称ロゴのレーシングスキーらしくないデザインに(よく考えると痛くない)していたのですが…
3月に練習中に大転倒、剥離してしまい新品交換になりました。
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これを機にデザインを変えてまた痛板化しました。
今回はこの2度にわたる作業を通じて、痛板化のノウハウをご紹介したいと思います。

デザイン検討
今年のデザイン、実は昨年悩んでボツにしたデザインです。どちらにするか悩んだ時は、Macの画面や頭の中だけで考えず、実寸で試作することをおすすめします。雰囲気を掴むだけなので、安いプリンタ用紙に印刷して切り抜いたものをセロテープで仮止めした物で十分です。左右を作る必要もありません。
こちらが昨年採用したデザインの方。
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グラーデーションと非対称(片方だけだとわかりませんが)の大きなロゴはフリーライド系のスキーではよくあるデザイン。なぜかレーシングスキーになると原色+ハイコントラストの「強そう」とか「速そう」なデザインばかりなので、そういう固定観念を打ち破ってみるのが狙いでした。
履いていると知らない人から声を掛けらたり、中には「来季モデルですか?」といってくる人もいて、ウケはよかったのですが、盗難防止にはなってなかったかも(笑)。
そして今年のデザイン。
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いわゆるレトロ復刻デザインですね。ロシニョールが4Sの、ディナスターがクープドモンドの、オガサカがユニティの復刻をやっていますが、それをアトミックもやったなら…というコンセプトです。昔の画像などを検索して、作りやすそうな幾つかデザインを組み合わせました。この系統のデザインの時代、実際にはSL用はブルーだったようですが、元の板の色がどうしても見えるところがあるので、止むを得ず色は赤(テストプリントなので薄くなってます)。

作り方
色を元の板にきちんと合わせる。
今回素材になる元の板はSL用で真ん中にプレートがあり、それを外すことができません。そうすると、どうしてもその周囲は元の板の色が見えてしまいます。その継ぎ目で違和感が出ないように、正確に色合わせをする必要があります。
デザイン業務に携わっていれば常識なのですが、画面の色はプリントアウトされる色に正確ではありませんから、あくまでプリントアウトした色を実際の板と合わせて確認する必要があります。
そこで、何種類か色をつくり、チップ状にならべて本番の紙に印刷したサンプルを作りって比較します。
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これなら紙と作業時間を無駄にすることなく、正確に色を決めることができるわけです。

ラベル用紙の耐水性テスト
以前の痛板では、板の周囲に対して余白を残してラベル用紙を貼り、ラベル用紙が雪の水分に触れないよう、その余白部分を保護テープでカバーしていました。今回は余白を残さず完全にラベル用紙で板の表面を覆うので、どうしてもラベル用紙の切り口が雪の水分に触れます。今回使ったラベル用紙の取説では「そういう使い方をすると色が滲む」とありますが、それが実際どの程度なのか?を実験しました。
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一昼夜水に浸けておきましたが、問題になるような色の滲みはありませんでした。

トップ形状の型紙をつくる。
普通の板ならいらない作業です。SLスキーの場合はトップフィンがついていて、板の表面と段差があります。そこは「貼り付けてから切り抜く」わけにはいかないので、事前にぴったりの形状に切り抜けるように、あらかじめ厚紙で型紙を作っておきます。
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ぴったり段差にあうまでなんどもやり直します。また、左右で若干形が違うのでそれぞれ作ります。

印刷用データの準備
本番のラベル用紙に印刷するためのデータでは3つの注意点があります。
1つ目は、幅方向に「切り落とししろ」をつけることです
デザイン検討の時は、板にぴったりのサイズでデータを作っていると思いますが、そのままでは「誤差ゼロで切り抜き、誤差ゼロで板に貼り付ける」ことが必要になります。そんなことはできるわけないので、幅方向にやや太くデータを修正し(私の場合は左右で5ミリづつ)、貼り付けた後に余った部分を切り落とすようにします。
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2つめは、接ぎ目を合わせるためのマークいれておくことです。
A3のラベル用紙を使っても、トップ側は2枚のラベル用紙に分割する必要があります。その接ぎ目をぴったり合わせてカットするための目印をいれてプリントするとズレを抑えてキレイに仕上がります。下の画像のように私は斜めのラインをいれてます。そして接ぎ目の前後のラベルは、接ぎ目でぴったりではなく、重なり合う部分が出るようにデータを作ります。(作業方法は後述)。
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3つめは、左右がわかるよう余白に目印を入れておくことです。
(このスキーのように形状に非対称がある場合)もちろん、余白を切り落とすと目印は消えてしまうので、裏面の剥離紙に手書きで転記する必要がありますが…
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2種類のヘラを用意する。
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プリントしたラベル用紙には保護用のシートが同梱されており、それを貼り付ける作業があります。さらにそうして完成したラベルを板に貼り付ける作業、さらにその上に保護シートを貼り付ける作業がありますが、どの作業もヘラを使うと気泡が入らずキレイに仕上がります。
まずゴム製の広いヘラで広い範囲をムラなく圧着します。
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プラスチック製の硬いヘラはしっかり圧着し気泡を出すのに使います。
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下の画像を拡大すると、しっかり圧着できてる所と、気泡が残っている所の差がわかると思います。
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また、トップフィンのキワなどの細かい所をきっちり圧着するのに使えますし、板のエッジ部分でラベルをしごいて折り目をつけておくと、余分な所を切り落とす作業の目安になります。
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接ぎ目をぴったり合わせるためには
プロ用の大判プリンターでも使わない限り、どうしてもできてしまうラベルとラベルの接ぎ目。ここをキレイに合わせるためには、ラベルを板に貼り付けるときではなく、その前の段階にあります。
切り抜く前の接ぎ目の前後のラベルを、接ぎ目を合わせるマーク(斜めの黒線)を目安にぴったり合わせます。マークを黒の斜め線にするのは、前後左右のズレがよくわかるからです。
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そうすると、ラベル同士が重なり合う所ができるはずです。ここを真ん中あたり(でかつデザイン的に接ぎ目が出ても目立たない所)で2枚まとめてカットします。
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そうすると、接ぎ目がぴったりの2枚のラベルが出来上がります。
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この後、印刷の外形で切り抜きます。この外形は板の外形より大きくなってますから、ラフで大丈夫です。
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このラベルを板に貼り付け、板に合わせて余分な所を切り落とし、さらに保護テープを貼り付けます。

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最後に保護テープの余分な所を切り落とします。このとき、カッターの刃を斜めに当てると保護テープがめくれにくくなります。
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以上で完成です。元のデザインと、オリジナルデザインのビフォーアフターはこんな感じ。
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以上、痛くない痛板の作り方でした(痛いかどうかはあまり関係ないかも)「俺もやってみよう」というみなさんの参考になれば幸いです(ただし、自己責任でお願いします)。

※「ATOMIC」や「ARC」、「REDSTER」などの商標はアメアスポーツが権利を所有すると思われますので、私がこの板全体や一部、あるいはプリント用データを販売したり配布する事は絶対にありません。また製作の代行等もやりません。あしからずご了承ください。
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