グッドデザイン賞、いわずとしれた日本を代表するインダストリアルデザインの表彰制度です。

私が携わった製品も幾度かこの賞の選定を受けていますが、私とその周辺に限って言えば、「もらってうれしい」「是非欲しい」という賞ではないようです。

かねてよりこの賞は、美観だけではなく、使いやすさや新しい機能や技術、最近ではエコロジーやリサイクルなどの製品の総合的な評価で受賞製品を決めてきました。

(評価のポイントはここを参照)

しかし現実にはデザイナーの職域は「美観と使いやすさ」の範囲にとどまっていますので、「現場デザイナーの苦労やコダワリは評価の対象ではない」=「もらっても嬉しくない」のです。

もちろん製品を買ってくれるお客様にはデザイナーの苦労は関係ないので、賞としては間違ってないんですが。

しかし先日、グッドデザイン賞の選定に関わった経験のある方から面白い裏話を伺いました。

(前略)…薄型テレビの審査であれば、大型のプラスチック部品を美しく成形するのがいかに難しいか、車の審査であればボディの曲面がどれほど滑らかかが審査員の間で話題になる…(以下略)

のだそうです。これってまさに現場の苦労やコダワリの話です。

しかし受賞後に公開される受賞理由や落選理由(これは非公開。問い合わせると教えてくれる) にはそんな話書いてないです。

つまり公にする文章には建前しか書いてないんですね。「面白い」「カッコいい」だけでは公的(元々は通産省が運営していた)な賞はあげられないから美辞麗句で固めてるんじゃないでしょうか。

こういうの、デザイナー(審査員の大半はフリーのデザイナー)の得意分野です。「カッコいい」だけじゃクライアントは納得してくれないので「企業価値を高める…」とか「市場の動向が…」とか美辞麗句を並べるんですね。

もっとも応募する方も同じです。苦労やコダワリは評価の対象外と思っているので、応募書類には美辞麗句を書きます(ウソは書きません)。会社として応募するのであまり生々しい裏話も書けませんし。

これってスゴい不幸な行き違いです。お互い本音は一致してるのに建前が邪魔をして反目してるわけです。

ここはどうでしょう、同業者同士、本音をぶつけ合う賞にしませんか?
現在は大賞審査だけで行っている応募者のブレゼンテーションと審査の公開を2次審査から行ってはどうでしょう?
会場のビッグサイトを少し長く借りれば可能ですし、そのための費用だって、審査会の傍聴を有料で公開すれば集められるのでは?
審査プロセスを透明化すれば「良いデザインとは何か?」の啓蒙にもつながり、製品を購入するお客様の目が肥えてデザイナーは仕事がしやすくなります(美辞麗句も要らなくなる)。デザイナーは顧客価値を軸足を置いているはずなので、業界全体のレベルアップはお客様にもメリットがあるはずです。
 
選ぶ人、選ばれる人、製品を買う人の誰もがハッピーになる提案だと思うのですが、どうでしょう? 

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