ヒルズ

もう終了してしまったのですが、森美術館で開催された「ル・コルビュジェ展」に行ってきました。
ル・コルビュジェは様々に紹介されていますが、今回の見所は建築作品の実物大!模型でしょう。日本に居ながらにして、コルビュジエ建築を実感できます。さらに彼が建築以上に力を入れていた絵画や彫刻作品も紹介されていました。

感銘を受けたのは集合住宅ユニテ・ダビタシオンの一戸分の模型です。現代のロフト付マンションに強い影響を与えています。不動産屋に物件を案内されているような気分で内部を見て回ると、「ここに住みたい!」と思います。1Fのリビングと2階寝室が吹き抜けでつながれており、正面には大きな窓。この寝室から朝日に包まれたリビングの空間を見下ろすのは最高の気分に違いありません。実際ユニテ・ダビタシオンには入居待ちの人がたくさんいるそうです。ここに本物の画像があるので参照のこと。

また、彼の自邸も実物大で再現されています。芸術の着想を得、建築の構想を練ったであろうアトリエは、両サイドは大きな窓、高い天井は半円のドーム状で非常に開放感が高いです。いっぽう集中して図面やスケッチに没頭したであろう仕事場はアナグラのような包まれ感。この異質な2つの空間をシームレスにつないだ構成は、現代の先進的なオフィスにも通じます。彼の仕事の素晴らしさが空間構成にある、ということを再確認できました。

彼の終の住処であった「小さな休暇小屋」も再現されています。人間の大きさを単位としたモデュロールというコンセプトが体感できる!と期待したのですが、立ち入ることが出来るのはごく僅かの範囲で、調度に手を触れたり、ベッドに横たわることも出来なかったので、ちょっと期待はずれでした。

彼は、建築と同じだけ絵画や彫刻にエネルギーを注いでいる自分が、芸術家としては評価されないことに不満を感じていたそうです。建築であれだけの成果と名声を得ていながら贅沢な!という気もしますが、才能なんて物は、持っている人にとってはあまり意味のないものなんでしょう。建築の才能に恵まれたコルビュジエにとっては、建築は「出来て当たり前」のことで、自分にとって難しいチャレンジであった芸術活動こそ、他人から評価されたかったのでしょうか。

人間って、どこまでも無い物ねだりというか、自己評価と他人からの評価が一致しないと満足しない生き物なんだなあ、と思い知ったエキジビションでした。
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