ディズニー×ピクサーのCGアニメ「カーズ」。クルマを主人公にした作品ですが、クルマ好きの人って意外とこういうのは子供騙し的に思えて興味が持てないのではないでしょうか。正月休みはスキーをしていない時間はヒマなので「ポルシェが出てくるし、暇つぶしに」といった感じでDVDを借りてみたのですが、これが意外とクルマ好きのツボを突く面白いポイントが満載でした。今回はこれに絞ってこの作品を紹介したいと思います。

(1)ポルシェはやっぱり女性。日本でもポルシェはリアエンジン故のスタイルから「デカ尻女」といわれますが、この作品でも女性で登場します。弁護士資格をもち、街でモーテルを切り盛りするしっかり者というキャラクターが高品質を誇るポルシェっぽいです(弁護士=ポルシェというイメージからの設定かも知れませんが)。「超美人だけど気まぐれ」みたいな女性ならきっとフェラーリかマセラティなんでしょうね。

(2)イタリア系移民はフィアット500。日本語版吹き替えはジローラモさんです。街でタイヤ店を経営していて、主人公をレーシングカーと知って興味をもつものの、「ごめん、フェラーリにしか興味ないんだ」とか言ったりします。

(3)フォルクスワーゲンバナゴンがヒッピー。バナゴン(ワーゲンの1BOXの奴ですね)と言えば、60年代後半から70年代前半に放浪生活をおくったヒッピーたちに愛された車です。そのバナゴンが自然派で「オーガニック燃料」を売っていたり、「政府と石油会社が結託して…」と陰謀説を披露したりします。ウッドストックでジミ・ヘンドリックスが演奏した「星条旗よ永遠なれ」を流して、退役軍人のジープに「不謹慎だ」と怒られるシーンは爆笑しました。
(4)飛び交う羽虫がフォルクスワーゲンビートル。ビートルは日本ではそのまま「かぶと虫」の愛称で親しまれましたが、アメリカでの愛称は「bug(虫)」。画面ではとても小さいのですが、よーくみると確かにビートルに羽が生えて「ブーン」と飛んでます。芸の細かさにクスリとするやら、細かいコダワリに感心するやら。

(5)石油会社の社長がキャディラック。石油資本といえばアメリカ南部。アメリカ南部を象徴する車はキャディラックです。フロントグリルの上にはもちろん水牛の角(笑)。

その他、サーキットにやってくるVIPでマリオ・アンドレッティ(アメリカレース界の大御所)が出演していたり、フィアット500のタイヤ店にやってくるフェラーリの声がミハイル・シューマッハ(フェラーリF1のドライバー)だったり、オーバルコース育ちの主人公がカウンターステアを知らなかったり等々、「わかる人にはわかる」ネタがいっぱいです。

この映画をみて感じるのは「アメリカには自動車文化がある」ってことです。登場する車はアメリカ車に限りませんが、どんな車がどんな人たちに愛され、どんな生活を象徴しているのかが良くわかります。同じような作品を日本で作っても、ここまで多様なキャラクターが創れるとは思えません。アメリカ人には『クルマが好き」というイメージはありませんが、彼らの生活にはクルマが根付いているんだなあ、と感心することしきりです。
日本と言えば、国産車代表で日本が世界に誇る歴史的名車、ユーノス・ロードスターが登場しますが、人気レーサーにホイホイついていく、尻軽なグルーピー役です。なんか六本木の不良外人にぶら下がってるバカ女が日本女性のイメージなのか?と思うと「おいちょっと待て!」と言いたくなりますが…

ストーリーはありきたりな「自信過剰な若者がいろいろな出会いを通じて成長する」というパターンです。実写版を作るなら主演はトム・クルーズしかない(笑)。ありきたり=普遍的=大切なメッセージがある、ということなので、お子様にもおススメです。お子様が立派な「クルマ好き」に成長(?)したらまた楽しめること間違いなし!そんな作品です。
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